技術・研究開発
Technology/R&D

コーティング技術解説コラム
薄膜を作るには
CVDとは
CVDとは化学的な成膜方式で、大気圧~中真空(100~10-1Pa)の状態において、ガス状の気体原料を送り込み、熱、プラズマ、光などのエネルギーを与えて化学反応を励起・促進して薄膜や微粒子を合成し、基材・基板の表面に吸着・堆積させる方法です。
CVDプロセスの反応素過程
- ガス状で原料を送り込む
- 化学反応(エネルギー付与)
- 薄膜や粉体を形成
CVDプロセスの素過程
- 気層拡散による物質輸送
- 境界層中での気層化学反応
- 成長表面への吸着反応
- 基板表面での吸着反応
- 成長ステップに向かう表面拡散
- 結晶格子への取り込み反応
- 反応生成物の脱離反応
- 境界層中への気層拡散CVDプロセスの反応素過程
CVDの分類
CVDの特長
- 高真空を必要としないため、大がかりな真空装置が不要。
- 装置規模に対して、成膜速度や処理面積が有利でメリットがある。
- 成膜速度が速く、処理面積が大きい。大量生産に向く。
- 成形体の内外面や細部へも、成膜の均一性がある。
- 生成膜の組成や厚みを、精度よく調節できる。
CVD成膜の用途
- 半導体の絶縁膜・保護膜(酸化シリコン,窒化シリコン,etc.)
- 切削工具の刃先部やギアの接触部(窒化炭素,窒化チタン,etc.)
CVDの種類と特徴
熱CVD
- 比較的大量のガスを流しながら薄膜の生成を行う
- 均一性の良い膜厚分布
- ステップカバレッジが良好
- 比較的に装置が単純
- 高温を必要とする
- 高温で反応しないガスは使用できない
プラズマCVD
- 低温の成膜で基板ダメージの減少
- ステップカバレッジに優れる
- 大面積の成膜が可能
- プラズマによるダメージは問題
- 薄膜に残留応力の問題
ECRプラズマCVD
- 低温の成膜
- 高品質の成膜が可能
- 高密度のプラズマにより反応性大
- 大面積化が困難
- 装置が高価
- メンテナンス、調整に問題
光CVD
- 低温のプロセス
- イオン発生がなく基板のダメージ小
- 波長の選択で特定のガスのみを励起可能
- 光のみではエネルギーが弱い
- 長時間の成膜では汚染により光量が低下する(安定性に問題)
MO CVD
(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)
- 原料として容易に熱分解する有機金属化合物を使用
- 大面積・均一成膜が可能
- 単一原子層の厚み制御が可能
- 原料ガスに毒性の強いものが多い