コーティング技術解説コラム
薄膜を作るには

CVDとは

CVDとは化学的な成膜方式で、大気圧~中真空(100~10-1Pa)の状態において、ガス状の気体原料を送り込み、熱、プラズマ、光などのエネルギーを与えて化学反応を励起・促進して薄膜や微粒子を合成し、基材・基板の表面に吸着・堆積させる方法です。

CVDプロセスの反応素過程
  1. ガス状で原料を送り込む
  2. 化学反応(エネルギー付与)
  3. 薄膜や粉体を形成
CVDプロセスの素過程
  1. 気層拡散による物質輸送
  2. 境界層中での気層化学反応
  3. 成長表面への吸着反応
  4. 基板表面での吸着反応
  5. 成長ステップに向かう表面拡散
  6. 結晶格子への取り込み反応
  7. 反応生成物の脱離反応
  8. 境界層中への気層拡散CVDプロセスの反応素過程

CVDの分類

CVDの特長
  • 高真空を必要としないため、大がかりな真空装置が不要。
  • 装置規模に対して、成膜速度や処理面積が有利でメリットがある。
  • 成膜速度が速く、処理面積が大きい。大量生産に向く。
  • 成形体の内外面や細部へも、成膜の均一性がある。
  • 生成膜の組成や厚みを、精度よく調節できる。
CVD成膜の用途
  • 半導体の絶縁膜・保護膜(酸化シリコン,窒化シリコン,etc.)
  • 切削工具の刃先部やギアの接触部(窒化炭素,窒化チタン,etc.)
CVDの種類と特徴
熱CVD
  • 比較的大量のガスを流しながら薄膜の生成を行う
  • 均一性の良い膜厚分布
  • ステップカバレッジが良好
  • 比較的に装置が単純
  • 高温を必要とする
  • 高温で反応しないガスは使用できない

プラズマCVD
  • 低温の成膜で基板ダメージの減少
  • ステップカバレッジに優れる
  • 大面積の成膜が可能
  • プラズマによるダメージは問題
  • 薄膜に残留応力の問題

ECRプラズマCVD
  • 低温の成膜
  • 高品質の成膜が可能
  • 高密度のプラズマにより反応性大
  • 大面積化が困難
  • 装置が高価
  • メンテナンス、調整に問題

光CVD
  • 低温のプロセス
  • イオン発生がなく基板のダメージ小
  • 波長の選択で特定のガスのみを励起可能
  • 光のみではエネルギーが弱い
  • 長時間の成膜では汚染により光量が低下する(安定性に問題)

MO CVD
(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)
  • 原料として容易に熱分解する有機金属化合物を使用
  • 大面積・均一成膜が可能
  • 単一原子層の厚み制御が可能
  • 原料ガスに毒性の強いものが多い