技術・研究開発
Technology/R&D

用語集 さ行

サイクロトロン運動(cyclotron movement)

磁場を用いて荷電粒子に円形の軌道を描かせて加速する加速器のうち、磁場が時間的に変化しないものをサイクロトロン(cyclotron)と呼ぶ。
マグネトロンスパッタリング法において、ターゲットから叩きだされる二次電子をローレンツ力で捕らえ、サイクロトロン運動で不活性ガスのイオン化を促進し、スパッタリングの加工効率を向上させる。

酸化物(oxide)

元素単体あるいは化合物と酸素とが結合して生成する化合物。一部の金属の酸化物やケイ素の酸化物(ケイ酸塩)などはセラミックスとも呼ばれる。
金属酸化物の物性は多様である。例えば二酸化ケイ素SiO2はトランジスタに利用されており、現代コンピュータ技術の基礎を支えている。
電気的特性を例に取ってみても、絶縁体、金属と同程度の導電率を有する電子伝導体、イオン伝導体、超伝導体(高温超電導、主に銅系など)、熱電変換素子(主にコバルト系など)、さらには、誘電体、圧電体など、その物性と用途は多岐にわたり、身近な製品で酸化物を含まないものを見つけるほうが困難なほどである。

昇華(sublimation)

固体が、液体を経ないで直接気体になること。また、気体が直接固体になること。
元素や化合物が液体を経ずに固体から気体、または気体から固体へと相転移する現象。
標準圧では、ほとんどの化合物と元素が温度変化により固体、液体、気体の三態間を相転移する性質を持つ。この状態においては、固体から気体へと相転移する場合、中間の状態である液体を経る必要がある。
しかし、一部の化合物と元素は一定の圧力下において、固体と気体間を直接に相転移する。相転移に影響する圧力は系全体の圧力ではなく、物質各々の蒸気圧である。

蒸気圧(vapor pressure)

一つ物質を取りあげると、任意の温度に対して、その物質の気体が液体状態あるいは固体状態と平衡になるような圧がある。この圧が、その物質のその温度での蒸気圧と呼ばれる。
物質の液体の周囲で、その物質の分圧が液体の蒸気圧に等しいとき、その液体は気液平衡の状態にある。
温度を下げると蒸気は液体に凝結する。逆に温度を上げると液体は沸騰する(蒸気になる)。つまり、どんな圧のもとでも、ある物質の沸点はその物質の液体状態での蒸気圧が周囲の気体での分圧に等しいような温度である。

蒸発源(vapor source)

真空蒸着で薄膜形成する成膜材料を、加熱し蒸発させる源、あるいは構造(部品・装置・方式など)の総称。
蒸発源の構造は、線状・箔状の加熱ヒーターから、カーボンやセラミックなどのルツボまで、用途に応じて様々な形状がある。
蒸発源の加熱方式は、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱などがある。

触媒(catalyst)

特定の化学反応の反応速度を速める物質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう。触媒がもつ作用(触媒作用、catalysis)自体を指す場合もある。
具体例は、自動車には排気ガスに含まれるHC(炭化水素)、CO、NOXを分解・浄化するために白金、パラジウム、ロジウムもしくはイリジウムを主成分とする三元触媒が不均一系触媒として使用されている。
また、代表的な光触媒活性物質としては、酸化チタン(TiO2)が知られている。粉末状の酸化チタンを水中に入れ光(主に近紫外線)を当てると水の分解反応が進行し、水素と酸素に分解される。

真空(vacuum)

JISの定義、真空とは「大気圧より低い圧力の気体で満たされている特定の空間の状態」。
ドライコーティングでは、成膜材料の沸点を下げる、蒸発・飛散粒子の平均自由行程を確保、形成する薄膜の質を高める目的で、真空が必要である。

親水作用(hydrophilicity action)

酸化チタンでコーティングしておけば、水が付いても表面で水滴とはならず、そのまま流れ落ちるため、ガラスの防曇加工技術として既に応用、自動車のバックミラーや道路のミラーなどに利用されている。
また油性の汚れも全く定着せず、雨などで定期的に水を流すことにより、表面が洗浄される。
いわゆるセルフクリーニング作用。このセルフクリーニング作用は、既にビル外壁やテントシートおよび住宅用窓ガラスなどへ応用されている。